サンライズ:佐藤PD/エモーション:湯川PD
原作と変わった所はどこですか?またその理由は何でしょうか?
湯川
小林監督やシリーズ構成の吉田玲子さんたちと相談して、慶太の設定を変更しました。それが一番大きな変更点だと思います。
原作の慶太はフリーターでしたが、高校生にして原作のような強気なキャラクターではなくナイーブな少年にしました。
理由の一つに、今の不安定な時代性を考えた時、ナイーブな感性を持つキャラクターにした方が現在の空気感が出るのではないか、という考えがありました。
二つ目に、本アニメーションで大きな柱でもある『ドッペルライナーシステム』を原作以上にフィーチャーしようと思ったからです。
『ドッペルライナーシステム』の怖さをより分かりやすくするために、逆算的な考え方で慶太というキャラクターを作りました。
アニメ化に際して、『ドッペルライナーシステム』をより立て、ドラマチックにするためというのが大きな理由ですね。
幸い林達永先生、朴晟佑先生にもこの提案を快く受け入れていただき、アニメ版の設定の基本が固まりました。
『ドッペルライナーシステム』をドラマチックにすることと、慶太の設定変更は表裏一体であるということですね。
湯川
そうです。
『ドッペルライナーシステム』に関しては、原作ですと文字を読んで理解できるのですが、アニメーションでは音声と映像で表現しなければなりません。
そのため、より分かりやすくするために、サブとルートの他に、死んでしまったサブのテラを吸収した“マスタールート”という存在を作ったところも、原作と変えた点です。
こちらに関しては原作の設定を踏襲し、名称を変えただけですので、原作ファンの方には違和感はないのではないかと思います。
世界観についてですが、水没都市という設定はどのあたりから作られたものなのでしょうか?
佐藤
当初から監督のアイディアの中にあったものでした。
今と同じ時間軸で物語を進行させてしまうと、『元神霊』という存在や魅音寺グループの描き方というのになかなか説明しにくいところがありました。
かといってかなり未来にしてしまうと、原作から離れてしまうので、ちょっとした近未来においた方がお話としても分かりやすいだろうという部分を前提に、ビジュアル面で分かるものとして作った設定が水没都市でした。
水没都市=温暖化で海面が上がったという事ではなく、世界の仕組みと関わって起きた自然現象がビジュアルに現れている、目で見て分かるものとして作った設定です。
最終回まで作品を見ていただくと、少しずつ謎が明かされていくという作りになっていますね。
また、システムというものは目で見て分かるものではないので、主人公と一緒に物語を追体験することを通して、自分ならどうするかを考えていただければと思います。
いただいた場面カットを見ても、美術にとても力が入っていますね。
佐藤
小林監督は、非常に情景描写が得意な方です。
新しく作品を描くということでも『黒神』の世界観をどれだけ印象付けられるか、というところが一つのポイントだと思いました。
監督はロケハンによく行かれる方で、『黒神』の世界にリアリティを出すために、都内はもとより沖縄にもロケハンに行かれました。
それを元に画面を作っていくので、かなりリアル描写が多くなっています。かといって、原作の世界観や架空の世界もあります。
『黒神』の世界を強調するために、あの大変なカットがある、ということですね(笑)。
湯川
そういう意味では、『元神霊』や『ドッペルライナーシステム』という、突拍子もない設定に現実感を出し、地に足を付けた感じの演出を小林監督にしていただきました。
今上がっている映像を見ても、成功しているのではないかなと思います。
佐藤
総作画監督の西村博之さんも、アクションを超絶作画にしたり、なるべくリアルに描かれる方です。
湯川
リアル感がありながら、イクシードなどの描写がより映えるのだろうと思います。
そうすると、原作ファンが気になるアクションシーンは、アニメではかなりリアルなのでしょうね。
佐藤
そうですね。重量感は相当あると思います。
イクシードはどのように描写されているのでしょう?
佐藤
平面ではなく、立体的に見える演出を考えていただいています。
原作にある魔方陣のような紋章をアニメで止め画面のまま出してしまうと、原作ほどインパクトが出なくなる恐れがあります。
アニメだからこその、より空間を意識した演出にしていただいてます。
技に関しても、キャラクターの心情的な関係値で繰り出すように関連付けをさせています。
湯川
イクシードに関しては、監督と佐藤プロデューサーにはかなりご苦労をかけたと思います。
佐藤
イクシード専属担当のスタッフには、『コードギアス反逆のルルーシュ』でメカ作画監督をなさっていた前田清明さんという方がいます。
もともと総作画監督の西村さんもアクションにこだわりを持って作っていただいているので、作監さん方の総合演出が画面に出たらかっこいいのではないかなと思います。
原作の特に面白いところはどこでしょうか。
湯川
今回ピックアップしようと思った『ドッペルライナーシステム』ですね。
これをどう物語として入れ込んでいくかというところが面白かったですし、当然朴晟佑先生の美麗イラストも魅力的です。
あとは、バディ(相棒)ものの人間関係が作るドラマにも魅力があると思います。
かっこいいアクションも、原作を踏まえつつアニメではよりパワーアップさせる形で出来ればと思います。
アニメ第1話の見所はなんでしょうか。
佐藤
画面の美しさ、キャラクターの魅力。原作ファンの方に満足してもらえるよう、スタジオ一丸となって頑張っています。
キャラクターの心の距離感は、話数を追うごとに丁寧に描いているので、第1話の時の慶太とクロの気持ちを忘れずに最後まで見ていただけると、キャラクターの成長がよく分かって、楽しんでいただけるのではないかなと思います。
湯川
音楽もアクションシーンとのシンクロ率がとてもいいものになっていると思います。
また、役者さんも熱演なさっていて役にはまっているので、その部分も見所ですね。
プニプニ役の冬馬由美さんの演技は要注目です。
© 林達永・朴晟佑/スクウェアエニックス/サンライズ・バンダイビジュアル